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広島高等裁判所岡山支部 昭和24年(を)479号 判決 1949年12月21日

被告人

松田英雄

主文

原判決を破棄する。

被告人を一年以上二年以下の懲役に処する。

原審並びに当審における訴訟費用(いずれも國選弁護人に支給した報酬)は、全部被告人の負担とする。

理由

弁護人楠朝男の控訴趣意は、同弁護人提出の別紙控訴趣意書記載のとおりである。

同控訴趣意第一点について。

原判決挙示の檢察官事務取扱檢察事務官大原芳男作成の被告人供述調書に同檢察事務官の押印及び罪名の記載がないことは、所論指摘のとおりである。しかし、刑事訴訟規則第五八條には官吏その他公務員の作るべき書類の方式を規定しているが、所定の方式に違背した場合該書類を無効とするかどうかについては、別に規定していないから、その書類が方式を遵守しいため無効となるかどうかは、該書類の性質その他各場合の状況を参酌して裁判所の自由な判断を以て決すべきものと解すべきで所論調書の作成名義人檢察事務官大原芳男の署名と本件起訴状の作成名義人である押印のある同檢察事務官の署名とを対照すれば、両者が同一人の署名であることは、極めて明瞭であるから、該調書が右檢察事務官の作成に係ることを認めるに十分であつて、その調書が原判決において被告人断罪の資料となつた重要な書類ではあるが、所論の同調書に作成者の押印を欠く方式上の瑕疵は、該調書を無効としなければならぬ性質のものではない。しかして又、檢察官、檢察事務官等作成の被疑者に対する供述調書の記載事項については、わずかに刑事訴訟法第一九八條の規定があるだけで、罪名の掲記は法律上要求されていないから、所論調書に被告人に告げた被疑事件の罪名が掲記されてないからといつて、該調書を無効とすることはできないばかりでなく、被告人が取調を受けた被疑事件は同調書記載自体によつて明白である。所論は、該調書中不動文字を以て「被疑事件につき」と印刷された上部の空白となつている部分を捕捉し、独自の見解に基く論難を試みるに過ぎず、その主張は採用の限りでない。故に以上の論旨は理由がない。

〔註〕 本件は、結局量刑不当にて破棄自判。

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